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インターカルチュラル・シティ:活躍する外国人市民インタビュー Vol.18【レ ティ グエット ジエムさん】

幼少期に日本のアニメに影響を受け
日本文化に興味を持ったジエムさん
冠雪の富士山をいつか見たいと思うように

ジエムさんの故郷はベトナム中部のクアンナム省(Quảng Nam)。ベトナム中部に位置する場所で、冬の最低気温が20℃ほどで夏の最高気温が約32℃と、一年を通して過ごしやすい地域です。ホイアン旧市街やミーソン遺跡などの世界遺産があり、美しい自然や伝統文化が魅力の地です。

ジエムさんは建築系の自営業を営む父と、会社員の母、3つ上の兄と4人家族で仲がよく穏やかに暮らしていました。日本に興味を持ったきっかけは小学校の頃に友達に勧められて読み始めた「日本の漫画」。漫画の中で映し出される「富士山」や「一家団らんの様子」など、ベトナムとは違う雰囲気に憧れを持ち、日本文化をより深く知りたいと思うようになったそうです。前半はベトナム時代について伺いました。

(聞き手 三井忍) / 写真提供:本人

生まれ故郷のクアンナム省はどんなところでしたか

観光地として有名はダナン市に隣接しているクアンナム省(Quảng Nam)出身です。ベトナムの中部に位置しているため、南地方とは気候が異なり、夏と冬の寒暖差がある地域です。クアンナム省のホイアンは、世界遺産に登録された古い町並みが特徴で、夜になるとランタンの灯りで幻想的な雰囲気に包まれます。クアダイビーチやアナバイビーチなど、美しい海岸線も魅力です。世界遺産のミーソン遺跡では、古代チャム族の文化遺産を見ることができます。特産品として麺類の「カオラウ」や「ミークアン」が有名な名物料理で、日本のうどんやきしめんのような麺の上に野菜や魚介類、お肉などがトッピングされていて栄養満点なごはんです。クアンナム省は観光や食文化を楽しむのに最適な場所です。

クアンナム省の魅力ある風景や料理

観光地として有名なダナン市について教えてください

ダナンは観光地として有名で世界中から旅行者が集まる場所です。日本人にもとても人気のあるリゾートです。ダナンと言えば美しいミーケービーチ。バーナヒルズのゴールデンブリッジやドラゴンブリッジなど、観光名所も充実しています。ダナンでも、クアンナム省と同じように「ミークアン」や「カオラウ」などの麺料理や、新鮮な海産物などの名物料理を楽しむことができます。自然と文化、グルメを楽しむには最適な場所です。

ダナンの有名な観光地

ベトナム時代の思い出を教えてください

家族が集まる祝祭日や正月が印象に残っています。家族と一緒に過ごす時間は、とても温かくて幸せなものでした。ベトナム料理がとてもおいしく、特に、母の手料理や、みんなで囲む食卓の料理は、どれも本当に美味しくて、懐かしい味が心に残っています。ベトナムに帰省するときはいつも「食べたい料理リスト」を作って、母に作ってもらうのを楽しみにしています。

家族との思い出
お母さんの手料理

短大時代は学業以外に何が楽しみでしたか

学業がとても忙しかったですが、勉強の合間の気分転換として趣味の時間を大切にしていました。友人と一緒に料理をしたり、行ったことのないカフェ巡りをしたり、リフレッシュできる環境を作っていました。通っていた短期大学が故郷から車で約6時間と離れた場所にあったため、連休に実家に帰省することも楽しみのひとつでした。短大では色んな地域から学生が集まっていたため、友人の故郷の名物料理を教わって家族のために作り、一緒に味わう時間が心温まるひとときでとても印象に残っています。自宅でゆっくりと過ごし、次の学期に向けてエネルギーを充電する良い機会でもありました。

友人とカフェで
Bánh bột lọc Huế
バインボットロック
タピオカ粉の蒸し餃子
 bánh bột lọc chiên
揚げバインボットロック
タピオカ粉の揚げ餃子

日本に興味をもったきっかけについて

小学校の頃に友達に勧められて読んだ「名探偵コナン」「ちびまる子ちゃん」「ドラゴンボール」「セーラームーン」などの漫画です。ちびまる子ちゃんでは日本の家族の様子がよくわかり、絵の中で表現されている「富士山」にとても憧れがありました。ベトナムは雪が降らないため、雪がどんなものなのか見たい気持ちもありました。漫画で描かれる日本の建物や文化に憧れを持ちました。

医療系の短大(3年制)を卒業後
自分の可能性を広げるために日本へ

高校卒業後、ベトナムで医療系の短期大学(3年制)に進学し、検査技術を専攻していたジエムさん。ベトナムで検査技師として医療現場で働くことも検討していましたが、「医療」という選択肢だけに限るのではなく幅広い分野で仕事ができる環境を求め、技術が発展している日本で新しい挑戦をしようと考えました。

短大卒業後から本格的に日本語を習い始め、2017年に来日。浜松日本語学院で1年半、日本語を学び、その後、浜松未来総合専門学校(旧:浜松情報専門学校)ビジネスライセンス課で2年間経営について学びました。卒業後はエボルテック株式会社 浜松開発センター管理部事務サポートに所属し、社員が必要とする労務管理の手続のサポートや外国人の在留資格に関する手続き業務、資料の翻訳や通訳などを担当し会社にとって重要な任務を任されています。

後半は来日のきっかけから現在までご紹介します。

来日のきっかけについて

短期大学卒業後、医療分野で就職を探していましたが、自分の理想とする医療の分野を絞り切ることが難しいと感じたことと、将来の選択肢が限られてしまうことに不安を感じました。思い悩む中で、ベトナムには日本企業がたくさん進出していることと、技術が発展している日本に行ってみたいように思うようになりました。自分の可能性を広げるため日本行きを決め、日本語の勉強を始めました。

日本語の習得方法を教えてください

ベトナムの日本語センターで約1年間日本語を学び、簡単な日常生活の会話ができるくらいのレベルまで覚えました。2017年に留学生として来日し、1年半ほど浜松日本語学院に通い一般的な会話と日常生活に困らない程度まで日本語が上達しました。日本で就職するために、2019年から浜松未来総合専門学校(旧:浜松情報専門学校)ビジネスライセンス課に通い、日本語で授業を受けていましたが、難しい専門用語などは調べながら学びました。2022年12月に日本語能力試験N1を取得しましたが、来日8年目の現在でも仕事の専門用語を含め、幅広い分野の日本語を勉強しています。

日本語を学んでいたクラスメイトと一緒に

日本の印象について

街がとてもきれいで清潔感があり、人々がとても親切で礼儀正しい印象があります。特に、公共の場でのマナーや、細かいところまで気配りが行き届いている点に感動しました。行政の支援やサポートが明確で公平であることも印象的でした。日本は社会保障や行政サービスがしっかりと整備されており、誰もが平等に受けられるようになっている点がとても良いと思います。
2021年に結婚し1児の母となりましたが、子育て支援や社会保障がしっかりしているため、安心して住むことができます。

浜松の印象や住んでみて感じたこと

静かで落ち着いた雰囲気のある街で、自然と都市がうまく調和していると感じました。雪が降る地域はとても寒い印象がありますが、浜松は雪がほぼ降らない地域ですので、比較的温暖で過ごしやすい地域だと思います。全国的に夏は暑くなりますが、浜松は風が強い日もあり気持ちよく感じることも多いです。
住んでみて感じたことは、浜松は非常に住みやすい場所だということです。交通の便が良く、駅周辺にはショッピングモールやレストランも多く、生活に必要なものがすぐ手に入ります。浜松は、周りに緑が多く、きれいな公園や川沿いの散歩道もあり、自然の中でリラックスできる場所が多いため、暮らしやすさを実感しています。

いまどんな仕事をしていますか

浜松未来総合専門学校(旧:浜松情報専門学校)ビジネスライセンス課に通っていたときに、学校の先生に紹介されて6カ月間インターシップでエボルテック株式会社にお世話になりました。卒業後はエボルテック株式会社に入社し、今年で3年目になります。浜松開発センターは日本人50名、ベトナム人13名が在籍しています。
具体的な業務は、勤怠管理やデータ入力、電話対応、メールのやり取りなど、オフィスでのさまざまな業務を行っています。社員が必要とする社会保障や年末調整などの手続の案内やサポートはベトナム人だけではなく日本人の社員にも同じように行います。2か国語を活かした仕事では在留資格に関する手続をベトナム人スタッフ一人ひとりに対応しながらスムーズに進められるようサポートしています。また、資料の翻訳や通訳も担当しており、業務の効率化を図るために日々努力しています。

理解のあるとても良い会社だそうですね

「日本人」「外国人」という壁がなく、みんな同じように仲間として一緒に仕事ができる環境に感謝しています。昨年4月に子どもが生まれましたが、産休も十分に取ることができ、子育てに理解がある会社だと感謝しています。会社に復帰しましたが、保育園に預けている子どもに何かあった場合は周りの方が協力してくれて早退や遅刻なども受け入れてくれます。仕事においてのサポート体制もしっかりしていて、本当にこの会社に就職できてよかったと感じています。

会社の仲間と

今後やりたいことや目標について聞かせてください

現在の業務のスキルをさらに向上させ、事務サポートや翻訳・通訳の能力を高めたいと考えています。特に、労務管理やビザ手続きなど、より専門的な業務にも対応できるように、法律や規制についての知識を深め、実務経験を積むことが目標です。日本語のスキルの目標はビジネスレベルでのコミュニケーション能力を高めることです。会議やプレゼンテーションで自信を持って意見を伝え、複雑な問題解決にも対応できるようになりたいと考えています。

仕事風景

最後にエボルテック株式会社執行役員浜松開発センター長 藤垣晃司さんに職場でのジエムさんについて伺いました

エボルテック株式会社執行役員浜松開発センター長 
藤垣晃司さん

弊社はエンジニアの派遣事業や情報システム、機械設計などの請負や受託開発事業を手掛けている会社です。優秀なエンジニアを擁し、複合的なプロジェクトにスピーディーに参画することにより「世界に誇れる日本のものづくり」を支えられるよう日々進化し続けている会社です。 ベトナムに事業をゼロから立ち上げて今年で6年目になります。ジエムさんはベトナムと日本の架け橋になる仕事をしてくれていて感謝しかありません。全社で優秀なベトナム人のエンジニアが21名おりますが、在留資格や日常生活、日本の環境や日本で結婚した場合の社会保障など、全ての面においてベトナム人が安心してエボルテックで働いてくれるのもジエムさんの手厚いサポートのお陰です。ビジネスマナーも完璧で安心して業務を任すことができています。優秀なベトナム人スタッフが全国のクライアントと一緒に仕事をして成果を収め社会に還元できている陰にジエムさんの存在があると思っています。

本日はありがとうございました。今後の活躍も楽しみにしています。

レ ティ グエット ジエム(LE THI NGUYET DIEM)

1994年10月26日クアンナム省生まれ
2015年6月 フエ医療短期大学卒業
2016年10月~2017年9月 Kaizen Yoshida school (ベトナム)日本語学習
2017年10月~2019年3月 浜松日本語学院 
2019年4月~2021年3月 浜松未来総合専門学校(旧:浜松情報専門学校)ビジネスライセンス課
2021年4月 エボルテック株式会社に勤務
2021年 ベトナム人と結婚
2023年4月 男児誕生 
2024年4月からエボルテック株式会社に復帰