教育に力を注いでいる都市「PUNE」出身のオムカーさんーやさしい人々に囲まれて過ごしたインド時代ー
インドの南西部、ムンバイから車で約3時間の場所にあるPUNE(プネ)出身のオムカーさん。PUNEはインド国内で第8位の人口規模を誇る大都市で、夏、冬、梅雨と季節感のある土地で過ごやすい地域です。PUNEには日本でいう東京大学や京都大学のようにトップレベルの大学があり教育で有名な都市です。IT企業や製造業も数多くあり、発展しています。
インドのトップレベル「PUNE大学大学院 コンピューターマスター科卒業」のオムカーさんはITのスペシャリストとして現在、株式会社ソミック石川の海外プロジェクトのリーダーとして活躍しています。2022年4月に来日してわずか1年半で「高度専門職1号」の在留資格を取得。「高度専門職1号」とは、日本の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人に与えられ、他の一般的な就労資格よりも活動制限が緩和された在留資格で取得が難しいとされています。
IT分野で活躍しているオムカーさんは日本に住む外国人の学生のメンターとしても活動しています。自分の経験をもとに、日本での生活や就職活動などのアドバイスも行っています。前半はインドで過ごした日々の話をお届けします。
(聞き手 三井忍) / 写真提供:本人
生まれ故郷はどんなところでしたか
インドのPUNE(プネ)で育ちました。教育で有名な地区でインド全土から勉強するために集まってくる地域です。インドのITの中心地域でもあるため、IT企業と製造業が多くあり、インドの中でも急成長している地域です。PUNEには美味しい食べ物もたくさんあり、Misal(ミサル)という、豆のカレーに揚げスナック麺をいれたものが有名です。
インドというと人が多い印象があると思いますが、PUNEの郊外に行くと緑も多く、川や湖もあり、日本でいうと富士宮のような感じです。PINEの人々はみんな優しく困っていると助けてくれるため、インド時代に困ったことはほとんどありません。人の優しさに溢れた街で過ごしたインド時代でした。
子どもの頃は何をして過ごしていましたか
インドは日本の学校と学ぶ期間が異なり、小中学校が10年間(1~10年)、ジュニア大学が2年間(11・12年)、大学(13~16年)が4年間です。小中学校時代はバスケットボールとハンドボール部に所属していました。スポーツにも力を入れる学校でしたので、半日授業の後に部活動にも力を注げる環境でした。小中学校8~10年はキャプテンを務め、ハンドボール部は強豪校でPUNEの中で20チーム中、1位の成績でした。
スポーツと勉強の両立は大変でしたが、勉強の成績が良かったため、スポーツも同じように力を入れました。大変なこともありましたが、バランスを取りながらなんとか乗り越えました。スポーツのおかげで学校ではたくさんの友達ができて、放課後はみんなでよく遊びに行っていた思い出があります。
インド時代の思い出について教えてください
インドの西海岸にある美しいビーチリゾートの「ゴア」に小学校からの親友4人で行ったことです。ゴアはヨーロッパのような街並みや世界遺産の教会などがあり、インド人にとっては憧れのリゾート地です。世界中から観光客が訪れるようになり、インドの誇れるリゾート地です。日本で例えると沖縄のような感じで、海や山などの自然があり、買い物もできます。とても素晴らしい場所に1週間滞在し、親友たちとたくさんの思い出を作りました。「大きくなったらゴアで自然を満喫し楽しい時間を過ごそう」と子どもの頃から決めていた約束を果たすことができ幸せな時間でした。
インドの食べ物や行ってみたい場所について聞かせてください
インド=カレーのイメージがあると思いすが、インドにはカレー以外にも美味しいものがたくさんあります。北地方と南地方で食べものが違い、南インド料理で有名なのがドーサです。米粉で焼いたクレープのような生地の上に、ポテトやココナッツやサンバルなどの副菜と一緒に食べます。お店によっては生地の直径が80センチほどととても大きく、インパクトのある料理です。
北インド料理で有名なのはナンやサモサです。サモサは街でどこでも見かける定番の料理で、スパイシーに味付けしたジャガイモなどを三角形に包んで揚げた料理です。パイ揚げ餃子のような感じで日本人の方でも食べやすい料理だと思います。
インドでは食べ物の他にも違いがあり、北地方と南地方では言語が異なります。南インドでは11言語、北インドではヒンディー語が話されます。インドに住んでいても全くわからない言葉もあるほど、地方によって文化や言葉が違うところも魅力です。
インドは広いので行ったことのない場所がたくさんありますが、今一番行ってみたいのが、カシミール地方です。カシミールはインドの北側に位置していて雄大な自然とキレイな花々が咲くことで有名な最も美しい都市です。
日本の文化とテクノロジーの素晴らしさに憧れた学生時代ー自分自身の成長のために日本行きを決意ー
オムカーさんが日本に興味を持ったきっかけは15歳位から見始めた日本のアニメ。すぐに日本のことが好きになり日本について調べはじめたそうです。日本の文化、産業の発展やテクノロジーなどに魅力を感じ、自分自身の成長させるために日本行きを決意したオムカーさんはPUNE大学時代から日本語を学びはじめ、週末に日本語学校に通い、平日はアニメを通して日本語を学んだそうです。生きた日本語を学ぶためにハロートークアプリを活用して、日本語への理解を深めました。後半は来日のきっかけや現在の仕事などについて伺います。
日本語の習得方法について教えてください
15歳ぐらいから「デスノート」や「ワンピース」を見ていました。音声は日本語で字幕は英語でした。インドでは小学校から教科によって英語、ヒンディー語、マラティ語で授業が行われるため、英語は小学生から喋ることができました。
日本のアニメを字幕なしで理解することを目標に大学のときから週末に日本語学校に通い、1日8時間勉強しました。日本語を聞くことを中心に勉強し、聞きなれてきたら読むことに重点を置きました。日本語学習を始めて3年後日本語能力試験N2に合格。その2年後にN1を取得しました。漢字も2000個以上は覚えましたので、日常生活の漢字に不自由はありません。
来日のきっかけ
インド時代の幼馴染がソミック石川に勤務していたことをきっかけに、日本の企業の試験を受けてみようと思いました。コロナ禍でしたので入社試験はリモートで受けました。日本企業で一部上場企業などの合格もいただきましたが、自分自身のさらなる成長を期待できるソミック石川に就職を決め、2021年10月入社し2022年4月に来日して浜松市のソミック石川に勤務しています。
大学時代からITの分野の勉強を重ねて、来日してさらに新しいテクノロジーを学ぶ素晴らしい機会になっています。会社の人はみんな本当に親切な人ばかりで、今まで一度も人種差別を受けたことがなく、嫌な思いをしたことがありません。環境に恵まれて仕事ができていることに感謝しています。
現在の仕事について
大学院で学んだ知識を活かし、国内と海外拠点の通信関係のネットワークの運用やサーバーやセキュリティ管理をしています。日本人、タイ人、インド人が在籍していて、国が違えば考え方も違うので難しい部分もありますが定期的に全員とコミュニケーションをとり、全員が同じ方向に進んでいることを確認しながら仕事を進めています。グローバルチームと技術プロジェクトに取り組む機会もあり、毎日業務が違うので、とてもやりがいがあり、興味深い仕事です。
日本の印象や文化の違いで驚いたことなど
日本の会社で働き始めたとき、マネージャーやディレクターレベルの人を含む社員がオフィスを掃除していることに衝撃を受けました。インドでは掃除を専門とする特別清掃員を雇っているため従業員は掃除をしません。会社は自宅と同じという気持ちで、自分たちで掃除する文化に驚きました。
また、インドでは湿ったゴミと乾いたゴミを分別しますが、日本ではビンと燃えないゴミも分別しており、人々が規律を守って生活をしていることに最初は衝撃を受けました。
インドと日本の一番の違いはどんなところだと思いますか
日本では他人に迷惑をかけないようにと心がけている人が多いと思いますが、インドでは迷惑をかけても許してもらえるというマインドの人が多いため、インドの人々は何事にもオープンだと思います。オープンにしすぎてときどき問題に直面する人がいますが、国民性がオープンのため、問題が起こっても解決まで時間がかかることはありません。
日本は他人とのトラブルを避けるために感情を強制的に隠そうとする人が多いように感じます。インドと日本の考えに長所と短所があり、どちらが正しいのかわかりませんが、今は日本人に近い感覚で生活しています。
浜松の印象や住んでみて感じたこと
浜松は本当に住みやすい地域です。人々がとても親切で、少し車で走れば美しい自然が多く、緑に囲まれる場所があります。街中もきれいで買い物する場所もたくさんあるし便利な都市だと思います。休日は中田島砂丘で海を眺めたり、山にキャンプに行ったり、川で遊んだりと、お金をたくさんかけなくても遊べる場所がたくさんあります。
日本の夏はインドと違って湿気を含む暑さなので苦手ですが、日本の冬は大好きです。インドの実家で過ごしていた時も寒い時期は3~4℃でしたので寒さには慣れています。雪には慣れていないため、雪が降ることの少ない浜松は快適です。
今後やりたいことや目標について
現在はソミック石川で海外チームのリーダーをしていますが、将来は日本国内の管理もできるプロジェクトリーダーになりたいと思っています。いつでも的確な判断を下すことができるマネジメント能力を身につけていきたいです。技術知識と指導力を高めるために、プロジェクト管理、ITの先進技術、セキュリティ関連の勉強を重ねています。
リーダーの経験と実績を積み、自分の経験を活かして将来はビジネスを立ち上げて、ITサービス提供とコンサルティングを世界に提供できるようになりたいと思っています。ソミック石川は副業OKな会社なので実現させて人生をステップアップしていきたいです。
浜松国際交流協会(HICE)の方に声をかけていただき外国人留学生の就労・起業促進のメンターをしていますが、自分の経験を通して多くの学生が快適に日本で生活できるようなサポートも全力で取り組んでいきたいと思います。
~素敵なお話をありがとうございました。今後の活躍も楽しみにしています。
ジョシ オムカー ケダー(Omkar Kedar Joshi)
インド、PUNE出身
1997年2月7日生まれ
PUNE大学大学院卒業 コンピューターマスター科卒業
2021年10月 株式会社ソミック石川に入社
2022年4月来日 浜松市在住