株式会社静岡県セイブ自動車学校 ブラジル人教習指導員
シルバ タカダ アルベルトさん
祖父母は日本人 子どもの頃から日本を身近に感じていました
浜松市中央区大人見町の静岡県セイブ自動車学校は、全国的にも珍しくポルトガル語だけで免許を取得できる自動車学校。年間500人の外国人卒業生を輩出しています。静岡県セイブ自動車学校には、ブラジル人の教習指導員が3名おり、日本語を使うのが難しい外国人のために免許取得のサポートをしています。今回は、8才でブラジルから来日し中学卒業後に工場などで社会経験を積み、5年前から自動車学校の教習指導員として活躍しているシルバ タカダ アルベルトさんから仕事に対する想いや浜松についてお話を伺いました。 (聞き手:三井 忍)
来日したきっかけを教えてください
母はブラジルでレストランを経営し父は日本で働いていたため、子どものころは家族バラバラで過ごしていました。私が8才の頃に母がブラジルのレストランを親族に譲り、日本に行く決意をしました。家族で過ごすことを優先したため来日しました。
日本に移住する抵抗はなかったでしょうか
祖父母が日本人でしたので子どものころから日本食に慣れ親しみ、日本語の単語もいくつか覚えていたため、特に抵抗はありませんでした。言葉に関して完璧ではなかったので不安はありましたが、家族と一緒でしたので不安はあまりありませんでした。
来日して一番驚いたころは何ですか
日本はとてもきれいで道路にゴミが落ちていないことに驚きました。ブラジルは道路にゴミが散乱していても誰もきれいにしようとしません。その他には食べ物の梱包が綺麗に丁寧にされているのにもびっくりしました。コンビニのおにぎりなどの梱包は画期的で誰が考えたのだろうと興味津々でした。
来日してブラジル人学校ではなく日本の小学校に通ったそうですね
日本語は少しの単語はわかりましたが、文章となると全くわからない状態でした。来日して小学校3年生から日本の小学校に通いました。日本語が分からない僕のために当時の担任の先生がポケモンのゲームをプレゼントしてくれました。ゲームを攻略したくて日本語の本を解読し理解したため、読み書きが一気に上達しました。わずか1年で日本語はほぼマスターした感じです。好きなものに対して真剣に日本語に向きあった結果だと思います。先生や周りの友達に感謝しています。
来日して25年。浜松での暮らしは7年目ですが、浜松の印象を教えてください
浜松に来る前は長野や山梨に住んでいました。現在は都田町に住んでいます。都田は山もあり川もあり自然豊かな場所で子どもを育てるのにとても良い環境だと思います。空気もきれいで住みやすい場所です。
中学校卒業後、工場の正社員として働きはじめたアルベルトさん。体力勝負の現場で働いていましたが、体力的に定年まで長く勤められるか不安になったそうです。周りの友人やHICEに相談し一生働ける仕事を探すことにしました。そこで出会ったのが「教習指導員」という仕事です。指導員になるためには難関の試験に合格しなければなりません。必死に勉強し4回目の試験で見事全科目合格。自動車学校の教習指導員として働きはじめ6年目を迎えました。後半では仕事について伺います。
人から感謝される仕事に誇りをもっています
教習指導員になるためには様々な経験があるそうですね
都道府県の公安委員会が試験を実施しています。事前教養の必須科目、法令に関する知識、技能に関する知識など様々な試験があります。日本人でも1回で受かる方は少ないと聞きました。ひとつひとつクリアして1年かけて全ての科目に合格しました。
実際に仕事を始めてどんな印象を持たれましたか
日本とブラジルの交通ルールが違うので、どうやって説明すれば一番わかりやすく伝わるのか最初はとまどいもありました。経験を積むうちに、教習生の理解の具合によって言葉を使いわけるなど工夫をしています。みなさん忙しい中で教習所に通っていますので教習生の時間を無駄にしたくないという思いもあります。
教習指導員になってよかったと思うのはどんな時でしょうか
「免許を取得しないと仕事にもつくことができない」と多くのブラジル人の方が言います。生活がかかっているためみんな必死にかんばります。免許を取得された時に泣いて喜んでくれる教習生もいますので、人から感謝される仕事につけて本当に幸せだし良かったと思います。工場で働いていた時はその製品を手にするお客様の顔を思い浮かべながら仕事をしていましたが、直接会うことができないため実感はありませんでした。教習指導はお客様と直結しているためとてもやりがいがあります。
日本は交通ルールがとても厳しい国のようですね
外国人を指導するうえで日本の交通ルールのレベルについて調べたことがありました。カナダ、スイスに続いて日本は交通ルールが厳しい国のランキングが第3位でした。細い道が多いため、細かい交通ルールが定められるのだと思います。ブラジルは大きな交差点を右折するときのダイアモンド型のラインがないため、中央で待つということがありません。日本は中央に進んでダイアモンド型に沿って右折するスタイルのため、教習でブラジル人に伝えると驚かれることがあります。
これからについて聞かせてください
2022年11月からセイブ自動車学校で卒業検定まで受けることができるようになりました。ブラジル人の教習指導員が3人、受付にもブラジル人のスタッフが1名在籍しています。日本語があまり得意でなくてもポルトガル語だけで免許を取得できます。多くのブラジル人の方に足を運んでいただき、免許取得の手助けができればうれしいです。そして5年前に転職した動機が「一生勤められる会社」を探すということでした。今の仕事は自分にとてもあっていると思います。定年までセイブ自動車学校で働きたいと思っています。
今後の活躍も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(取材時期:2023年3月)
シルバ タカダ アルベルト
ブラジル パラ州出身
8才で来日、中学卒業後工場などで働き経験を積んだのち、静岡県セイブ自動車学校に転職。
ブラジルの方が安心して自動車免許を取得できるようにサポートしている。