アスター株式会社
ポラッシュ バルーアさん
日本人の「真面目」が高品質なものづくりを支えていることを実感しました
今回のお話はバングラデシュ•チッタゴン出身のポラッシュ•バルーアさん。バングラデシュの短大卒業後、地元のレストランに一年勤めたのちに、叔父の勧めで日系企業のアスター株式会社バングラデシュ支店に入社しました。現地で日本の製品をバングラデシュの各地に届ける仕事などを中心に業務を行っていましたが、入社2年目に浜松市の本社へ転勤。日本語が全く話せない中での業務スタートでしたが、同僚に支えられながら今年で入社7年目となるバルーアさんに日本のものづくりに対する想いやで日本での生活などについて伺いました。 (聞き手:三井 忍)
バルーアさんの出身地のチッタゴンはどんなところでしょうか
チッタゴンは港町ですが、私が生まれそだった場所は山間部でした。山に囲まれ大自然の中で育ちました。父は農家で野菜や米などを作っていました。のんびり時がながれとても素晴らしい場所でしたが、大雨が降ると川が氾濫し、出かけられなくなってしまうような土地でした。頻繁に大雨が降ると学校に行けなくなってしまうため、6歳から首都ダッカのお寺に住み短大卒業まで親元を離れて暮らしていました。
6才で親元を離れたんですね
学校に通うためには仕方がなかったことです。このことを日本人に話すと驚かれますが、バングラデシュでは普通のことだと思います。寂しさはありましたが、年に1~2回は実家に帰ることができました。バングラデシュは日本の学校と学年数が違い、16才で高校卒業、18歳で短大卒業となります。2年日本より早く学校を卒業できるシステムとなっています。
短大では何を学ばれていたのでしょうか
子どもの頃から貿易の仕事につきたいと思っていたため、短大ではビジネスの基本であるビジネスマネジメントを専攻していました。いつか自分で商売するときのためにも、と思いノウハウを学びました。
日系の会社のバングラデシュ支店で働くことになりましたが来日前の日本人の印象はいかがでしたでしょうか
バングラデシュでは知らない人同士でも気軽に話をしたり、冗談を言ったりして、みんなが友達のような感じです。日本人のイメージとしては「とにかく真面目で仕事好き」ということでした。会社で日本とのやり取りをして感じたことは、細かいところまで指示があり、的確で段取り通りに業務ができるスケジュールが組まれていることです。バングラデシュの会社ではあまりないことなので驚きました。日本から届く商品はどれもしっかりしたもので1ミリの狂いもなく素晴らしいものでした。真面目な日本人が丁寧にものづくりをしている現場に興味がわきました。
入社2年目の2016年に来日。日本語が全く話せない中での来日でした。浜松市の日本語教室に通いながら、同僚の助けもあり約1年で日常会話には苦労しないレベルに。次の章では浜松での暮らしや文化の違いについても伺っていきます。
日本で家族ができ第二の人生がスタート
両方の文化を知っている自分にできることをしていきたい
来日されたとき何に一番驚きましたか
生の魚を食べることに一番驚きました。バングラデシュでは生で魚を食べる習慣がありません。「すし」や「さしみ」といった言葉は聞いたことがありましたが、実際に見ると衝撃でした。最初は食べることに抵抗がありましたが、今は食べられるようになりました。どうしても食べられないのは納豆です。ねばねばした独特の食感が苦手です。
食の他にも文化の違いなどで驚いたことはありますか
まずは物価が高いことですね。バングラデシュの10倍以上は高いかと思います。大きなスイカが3000円以上で売られていることがありますが、バングラデシュでは100円程度です。あと、日本のスーパーでは1個単位で野菜が買えますが、バングラデシュはキロ単位です。
あとは、バングラデシュは宗教がとても身近な存在です。仏教徒は少数で、ムスリムが圧倒的に多いです。親と同じ宗教で原則改宗などは考えられないのですが、日本は無宗教の人も多く、信仰心に関係なくクリスマスやハロウィンのイベントを楽しんだり、お寺や神社にも行くのにも驚きました。
このあたりが文化の違いを実感した瞬間です。
食文化の違いに衝撃を受けたわけですね。日常生活の日本語はどのくらいでマスターされたのでしょうか
来日した当初は日本語が全く話せませんでした。会社の方がみんな優しくて毎日、日本語を教えてくれました。他にも電車やバスの乗り方、買い物の仕方まで、日常生活に困らないよう助けてもらったり、日本語教室を紹介してくれたこともあって、約1年で日常会話ができるレベルになりました。
来日して7年。浜松の印象はいかがでしょうか
以前は浜松市中央区葵西に住んでいましたが、現在は細江町に住んでいます。山も川もあり自然豊かで子育てにとても良い環境だと感じ、五ヶ月前に自宅を購入しました。空気が澄んでいて夜は星がきれいにみえます。自分の故郷であるチッタゴンに似た雰囲気もありとても気に入っています。浜松は住みやすい場所で、防犯面も安心しています。コロナ禍もあり6年ほど両親に会っていませんがいつか浜松の良いところを両親に紹介したいと思っています。
これからについて聞かせてください
将来は子どもの頃からの夢でもある貿易の仕事にチャレンジしてみたいと思います。日本とバングラデシュの良いところをたくさんの方に伝える仕事もしていけたらいいなと思っています。いつかバングラデシュと日本の架け橋となれるようにがんばりたいと思います。
今後の活躍も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
(取材時期:2023年3月)
プロフィール
Palash Barua(ポラッシュ バルーア)
バングラデシュ チッタゴン出身
2014年アスター株式会社 バングラデシュ支店に入社
2016年に来日
2018年に日本人女性と結婚
現在4歳になる娘さんがいる一児のパパ