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インターカルチュラル・シティ:活躍する外国人市民インタビュー Vol.19【マーテル ダビッド さん】

メープルシロップと紅葉で有名な「イースタンタウンシップス」が故郷
自家製メープルシロップづくりが日本でのビジネスのきっかけに

カナダ東部ケベック州モントリオール郊外出身のマーテル・ダビッドさん。16歳の時にフランス語圏のケベック州から英語圏のブリティッシュ・コロンビア州のビクトリアに引越ししました。カナダでは外国語の単位を取得する授業があり、英語圏のほとんどの生徒はフランス語の授業を受けていましたが、ダビッドさんは、すでに英語、フランス語が話せたため、「将来きっと役に立つ日が来る」と感じた日本語の授業も選択し、本格的な日本語の勉強をはじめました。

高校3年生の時にカナダ大使館と日本政府が企画した「日本について」のエッセイコンテストで認められ、副賞として3カ月間日本に短期留学しました。成田空港上空から見た日本の伝統的な「青瓦」のキレイな家々の印象は今でも鮮明に覚えているそうです。

ダビッドさんの生まれ故郷の「イースタンタウンシップス」はメープルシロップと紅葉が有名な場所です。夏は蒸し暑く冬はマイナス30℃と寒暖差が大きく、メープルシロップの原料となるサトウカエデの樹液の生産に適している気候となるそう。ダビッドさんは、自宅敷地に植えられていた2本のカエデから樹液を採取し、毎年自家製メープルシロップを作っていたそうです。この経験が後にダビッドさんが日本でビジネスを始めるきっかけとなりました。

(聞き手 三井忍) / 写真提供:本人

生まれ故郷はどんなところでしたか

「イースタンタウンシップス」というキーワードでインターネット検索すると綺麗な景色がたくさんでてきます。自然豊かで街の人も優しく素晴らしい環境の中で育ちました。メープルシロップが有名で、収穫時期の2~4月限定でメープルシロップ小屋ではたっぷりのバターで焼いたパンケーキ、スクランブルエッグ、燻製ハム、ソーセージ、茹でたジャガイモなどにメープルシロップをかけて食べる伝統料理を楽しむことができます。地元の方をはじめ、世界中から観光客が訪れる人気のイベントです。メープルシロップを煮詰めて水アメ状にしたものを雪の上に落として木のスティックでからめ取る「キャンディー」もとても美味しくて大好きでした。

ダビッドさんのご親戚の写真 メープルバケツの中に雪

子どものころは何をして遊んでいましたか

メープルシロップが採取できるカエデの木が庭に2本植えられていたため、樹液を採取し自家製メープルロップを作っていました。樹液を煮詰めすぎて家の中が煙だらけになったことが思い出として残っています。

冬はマイナス30℃になる寒い地域なので、自宅の庭にスケートリンクをつくり友達10名くらいでアイスホッケーをしました。夏は自転車のBMXなどで遊んでいました。

自然豊かな場所でのびのびと生活していましたが、湿気が多いケベック州が母の喘息に悪影響だということがわかり、16歳のときにモントリオールから約5000キロ離れた祖父母が住んでいるブリティッシュ・コロンビア州のビクトリアに引っ越しました。ビクトリアは雪が降らない地域で、夏は25℃前後と過ごしやすいです。カナダ人にとっては憧れの場所で大都会です。お金持ちでお洒落な人が多くケベック州とは違った良さがある地域でした。

冬のケベック

カナダの良いところについて

カナダ全体でとらえると「エコツーリズム」を積極的に取り入れている印象があります。自然豊かな地域でハイキングやカヤックなど自然と一緒に暮らせる場所がたくさんあります。週末はバーベキューなどを楽しむ人が多いです。カナダの人は優しい人が多く、落ち着いている印象があります。

エコツーリズム

日本に興味をもったきっかけについて教えてください

日本の漫画や寿司もブームになっていない30年前、将来、太平洋を囲む地域の貿易が盛んになることを聞いて、日本語を学ぼうと決意しました。高校1年間で3年分の外国語の単位を取得できたため、残りの2年間は日本語とスペイン語を専攻しました。カナダ大使館と日本政府が企画した「日本について」のエッセイコンテストで認められ、コンテストに入選した10名で日本にホームステイしました。
最初の1カ月間は埼玉の大学で日本語を学び、残りの2カ月間は埼玉上尾高校に通学し日本の高校生活を体験しました。千葉県柏市のホストファミリーの家で2カ月過ごしましたが、日本に滞在して日本人の暮らしや建築、文化などますます好きになりました。

ダビッドさんの日本語取得方法とは?

「キレイな日本語を話す外国人になりたい」という思いが強く、「くだけた日本語」や「カタコトの日本語」ではなくしっかりと文法を習うことを基礎に日本語を学び始めました。さまざまなシーンによって使い分けができるように1つの言葉でも「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」のバージョンも同時に習いました。あとは動詞をたくさん学び、動詞の入れ替えで表現できるパターンを覚えました。漢字・カタカナ・ひらがなと文字の種類も豊富で日本語は覚えることがたくさんあると実感しています。

運命の出会いがあり結婚を機に来日
生まれ故郷の名産品「メープルシロップ」の美味しさを多くの方に知ってもらうためのショップを経営

高校生の時に初来日したダビッドさん。カナダでさまざまな経験を積みイギリスにも留学しました。1996年にワーキングホリデービザで2回目の来日を果たし9カ月間滞在。帰国後はカナダで仕事に就いていましたが、2003年に日本人女性と運命の出会いがあり、結婚を機に2005年に来日しました。

来日後は英語講師として働き、塾主催のパーティーなどでカナダの名物料理を振る舞う機会もしばしば。故郷の名産品「メープルシロップ」をキーワードとしたスイーツやメープルシュガーなど、手作り品が評判となり、ワークショップやマルシェなどにも出店するようになりました。メープルシロップを広げる活動を続け、2023年に和地町にメープルシュガー工房(メープル エクスペリエンス)をオープン。現在はオーナーとして忙しい日々を送っています。
後半は日本に滞在して感じたことなどを中心にお届けします。

来日のきっかけ

2003年にカナダでスポーツする若者のグループの中で奥さんと出会いました。1996年にワーキングホリデーから帰国して日本語を使う機会がなかったため、ほとんど日本語は忘れていましたが、彼女が英語を話すことができたため、会話に困ることなく順調にお付き合いが始まりました。
2004年に彼女が日本に帰国することになり遠距離で1年間過ごしていましたが、2005年1月に結婚を機に日本に行くことを決めました。日本で生活することを決めたため、最初は日本語を思い出す作業からはじめました。テレビやドラマをたくさんみて日本語に慣れる練習を重ねました。

日本の印象や文化の違いで驚いたことなど

日本に住み始めた当初、家の中に小さなクモを見つけて外に出そうとした瞬間にクモが飛び跳ねてびっくりしました。もちろんカナダにもいましたが、飛ぶクモを初めて見たときは衝撃的でした。1000円札ほどある大きなカマキリやクワガタはカナダでも見たことがなく、最初は何の虫なのかわかりませんでした。日本は虫が多い印象です。

文化でいえば「流しそうめん」をはじめてみた時は驚きました。食とアトラクションが一緒になっていて楽しい文化だと思いました。和食は美味しくてヘルシーで大好きです。特に筑前煮が大好きで日本の甘目の味付けがとても美味しいです。砂糖を料理につかい「甘しょっぱい」という味付けは日本独特の表現だと思います。「さ・し・す・せ・そ」の味付け順番も理にかなっていて、日本は繊細な味を追求する国だと思います。

カナダと日本の一番の違い

カナダは物価が高く消費税が17%と日本よりも高いです。レストランなどで食事をした場合は店員さんにチップも払うため、安いレストランでも1人3,000円以上はかかります。日本は質の良い食事をカナダより安く食べられると感じています。服飾品なども日本では質が安定したものを安く手に入れることができます。カナダでは「誰がどんな環境でどのように作ったか」ということを気にするため、公表されていないものはあまり買いません。靴1足でも1万円以上するのが通常です。どちらの文化が正しいのかわかりませんが、日本とカナダの違いを感じる瞬間です。

浜松の印象や住んでみて感じたこと

和地地区に自分のお店がありますが、近くに浜名湖があり山もあり緑が多く自然豊かで落ち着く場所です。屋根瓦の家も多く残っている地域で日本の伝統文化をそばで感じることができる素晴らしい土地です。浜松の街中は綺麗で都会的ですが、少し離れた郊外には中田島砂丘もあり海も堪能できます。時おり、家族で水窪に泊まりに行っていますが、美しい山々が広がっていて癒される場所です。

水窪滞在中の風景

来日してからの仕事について教えてください

来日してからは英語の講師がメインの仕事でした。夏休みの特別イベントとしてカナダの料理を披露する機会があり、メープルシロップを使ったカナダ料理を提供しました。メープルシュガーを手作りしてメレンゲのお菓子をイベントなどで提供し、英語教室とカナダのメープルシロップを使ったワークショップなどを定期的に行っていました。

コロナ禍で中断した時期もありましたが、「子どもたちが英語を習っている間、送迎のお父さんやお母さんがゆっくり休めるようにカフェを開きたい」という思いがあり、2018年に「メープル エクスペリエンス」というカフェを作りました。その後、縁があり2023年に「メープルシュガー工房」というお店を和地町にオープンすることが出来ました。

メープルシロップを使った手作りお菓子

メープルシュガー工房byメープル エクスペリエンスについて聞かせてください

店舗の内装は全て自分で考えました。「カエデの木から樹液がどのように採取されているのか?」わかりやすく表現しています。オーガニックのメープルシロップをはじめ、メープルバター、クッキー、手作りのメープルシュガーなどを販売しています。メープルシロップとメープルシュガーは味見をすることができますので気軽に声をかけてもらえるとうれしいです。白砂糖不使用のメープルだけで作った優しい甘さのメープルジェラートも人気商品です。
メープルシロップもメープルシュガーも日本の食文化に取り入れることができる調味料のひとつとして広がっていってほしいと思います。

メープルシュガー工房byメープル エクスペリエンス
浜松市中央区和地町4766-2   maple.experi@gmail.com

お店の外観
店内の様子
メープルシロップ
メープルシュガー
ジェラート

素敵なお話をありがとうございました。

マーテル・ダビッド(David Martel)

1976年生まれ
1994年 高校生の時に初来日
1996年 ワーキングホリデーで2回目の来日
1997年 イギリスに留学
1999年 カナダビクトリア州でTESOLの資格を取得
2005年 来日後、カナダで出会った日本人女性と結婚
2023年 メープルシュガー工房(メープル エクスペリエンス)を開業